AIと一緒に曲を作る方法——昔話の脇役が告白する歌ができるまで(連載第3回)
AIで曲を作るって、実際どうやるの?——第3回は、その作り方そのものを公開します。Sunoに入れるのは、たった2つ。①スタイル(英語の指示文)と②歌詞です。この2つを相棒(AI)と一緒に作ります。ただし、いちばん大事な『どんな曲にするか』という発想だけは、人間が決めます。私が作っている『日本昔話×脇役の告白』シリーズを実例に、タイトル・スタイル欄・歌詞・ジャケット画像の4点セットがどう生まれるかを見せます。正直に言うと、生成には運もあって、一発では決まりません。
先に結論:作曲サービス「Suno」に入れるものは、①スタイル(どんな曲にするかを書いた英語の指示文)と②歌詞の、たった2つだけです。この2つを相棒のAIと一緒に作りますが、「どんな曲にするか」という発想の芯だけは、人間が決めます。生成には運もあって一発では決まりませんが、設計図がしっかりしていると、良い曲に当たる確率が上がるというのが今の実感です。 「AIの曲づくりって難しそう」と感じている方に、1曲ができるまでの舞台裏をのぞいてもらえたらうれしいです。
こんにちは、アイランドネームです。
前回は、作った曲をSpotifyやApple Musicに届ける方法を書きました(作った曲をSpotifyやApple Musicに届ける方法——DistroKidで23サービスに一括配信した話)。その最後で、「次回は、いよいよ『作り方』そのものに踏み込みます」と予告しました。
今日は、その約束を果たす回です。
私の相棒であるAI(Claude Code。いまはFable 5というモデルと組んでいます)と一緒に、実際にどうやって曲を作っているのか。以降はこのAIのことを、いつものように「相棒」と呼びます。
曲づくりの正体は、「設計図づくり」でした
「AIで曲を作るって、鼻歌を歌うような感じ?」
やってみて分かったのは、そうではない、ということです。むしろ、書きものに近い作業でした。Sunoに入れるのは、次の2つだけです。
- ①スタイル:どんな曲にするかを書いた指示文。英語で書きます。
- ②歌詞:そのまま歌ってもらう言葉。
この2つを用意して貼り付けると、Sunoが音にしてくれます。
逆に言えば、この2つがいいかげんだと、いいかげんな曲になるのです。だから私は、スタイルと歌詞の2つを「曲の設計図」と呼んでいます。
そして、この設計図を相棒と一緒に組み立てるのが、私の曲づくりの中身です。
登録や料金の話は、連載第1回にまとめてあります(AIで音楽を作って稼げるのか、Sunoに登録して課金した話)。今日は、その先の「中身の作り方」に絞ります。
いちばん大事なのは、人間が「逆説」を決めることです
ここが、今日いちばん伝えたいところです。
設計図のうち、AIに丸投げしてはいけない部分があります。それは、「この曲を、そもそもどんな話にするか」という、芯の部分です。
私が作っているのは、「日本昔話×主役じゃない脇役の告白」というシリーズです。「KnoSHIMA 1029」の名義でやっている活動で、これは公開してかまわないものなので、名前も出しておきます。
桃太郎や浦島太郎そのものではなく、その物語の隅にいた「脇役」の心を歌にするコンセプトです。
このシリーズの肝は、有名な昔話に「逆説」を一つ持ち込むことにあります。逆説というのは、みんなが知っている話の裏側を、まったく別の角度からひっくり返すことです。
たとえば「舌切り雀」。あの雀は、おじいさんの糊を食べてしまって舌を切られる、ちょっと食い意地の悪い脇役として描かれます。
でも私は、こう書き換えました。
糊を食べたのは、空腹だったからじゃない。叱られてもいいから、あの家の縁側にいたかっただけ。つまり、あれは片思いの物語だった、と。恩返しの話を、そっと恋の話に読み替えるわけです。
この「どこをどうひっくり返すか」は、人間が決めます。
ここを相棒に丸投げすると、どこかで聞いたような、当たりさわりのない話になってしまいます。
決めるのは人間、それを歌詞やスタイルの言葉に仕上げるのが相棒。この分担が、私のいちばんの発見でした。
実演:7月17日から配信が始まる「鶴の恩返し」の曲
言葉だけだと分かりにくいので、実際の1曲で見せますね。7月17日から配信が始まる曲、「Snow at Dawn 〜与平の裏切り〜」です。題材は「鶴の恩返し」。
まず、私が決めた逆説はこうです。
助けた鶴が正体を隠して妻になる、あの話。夫が「機を織る姿をのぞくな」という約束を破る場面を、私はこう読み替えました。
夫は、じつは最初から相手が鶴だと気づいていた。それでも、貧しさの中で相手を幸せにできないと悟り、去ってもらうために「わざと」のぞいた。愛ゆえの裏切り、というわけです。
この芯だけは、私が決めました。そこから先は、相棒と一緒に「4点セット」を組み立てます。
1つめ:タイトル
英語の題に、和風の副題を付ける形にしています。この曲は「Snow at Dawn 〜与平の裏切り〜」。
シリーズ全体で形をそろえておくと、並べたときに一つの作品集に見えます。
2つめ:スタイル欄
ここは英語で、かなり具体的に書きます。
ジャンルはアコースティックなフォーク、テンポは1分間に74拍、指で弾くギターを中心に、男性のかすれた声で、最後のサビで半音だけ調を上げて盛り上げる。そんな具合に、楽器・速さ・声質まで言葉で指定します。
ここが具体的なほど、狙った雰囲気に近づきます。
3つめ:歌詞
逆説を、物語として流し込みます。サビでは、こんな一節を置きました。
つる、僕の つるよ/気づいてたよ 最初から
全文はここには載せませんが、こうやって「最初から気づいていた」という秘密を、静かなサビに忍ばせています。
4つめ:ジャケット画像の指示文
曲の表紙になる、正方形の絵です。指示文は、これも英語です。
「夜明けの空へ昇っていく一羽の白い鶴、下には主を失った機織り機、雪が静かに降る」といった情景を言葉で描いて、画像を作ってもらいます。
曲と絵の世界観がそろうと、作品としての説得力が出ます。
非エンジニアでも真似できる、4つのコツ
ここまで読んで、「やっぱり難しそう」と思ったかもしれません。
でも、コツはそんなに多くありません。私が実際に使っている、地味だけど効くコツを4つだけ挙げます。
1つめ:難しい漢字には、かっこでふりがなを振る
Sunoは日本語を読み上げるとき、漢字をときどき読み間違えます。
たとえば「囲炉裏(いろり)」「反物(たんもの)」のように、読みをかっこで添えておくと、誤読がぐっと減ります。地味ですが、いちばん効くのはこれです。
2つめ:曲の構造を、英語のタグで区切る
歌詞の中に、「Verse(歌い出し)」「Chorus(サビ)」「Bridge(転調して聞かせる場面)」といった見出しを英語で入れておきます。
そうすると、Sunoが曲の展開を読み取りやすくなります。どこがサビなのかを、こちらから教えてあげるイメージです。
3つめ:スタイル欄は英語で、できるだけ具体的に書く
「明るい曲」ではなく、「テンポは1分間に96拍、ナイロン弦のギター、ささやくような女性ボーカル」というところまで書きます。
あいまいな指示ほど、結果もあいまいです。ここは相棒が得意なところなので、遠慮なく手伝ってもらいます。
4つめ:一発で決めようとしない
同じ設計図でも、生成するたびに違う曲が出てくるのです。私は毎回、何回か作って、その中からいちばん良いものを選びます。
曲の長さも、2分以上の安定した形になるまで、何度か作り直すことがあります。
「一回で当てる」のではなく、「何回か作って、いいものを拾う」。これが現実的なやり方です。
正直な話:思い通りにはなりません。でも設計図で打率は上がります
きれいごとだけでは終われないので、ここからは正直な話です。
AIの曲づくりには、はっきり運の要素があります。
同じ指示を入れても、次の曲は声の雰囲気が違ったり、途中で展開が崩れたり、狙ったサビの盛り上がりが出なかったりします。「これで完璧」という一発は、そう都合よくは出てきません。
思い通りにならない回のほうが、むしろ多いくらいです。
それでも、と思うのです。
設計図、つまりタイトル・スタイル・歌詞・絵をていねいに作り込んでおくと、良い曲に当たる確率が上がる。これは、実際にやってみての実感です。
逆説の芯がぶれていなければ、何回作り直しても、曲は同じ方向を向いてくれます。
運まかせに見えて、じつは土台の設計で勝率が変わる。ここが、AIの曲づくりのいちばん面白いところだと感じています。
まとめ
長くなったので、今日の話をまとめます。
- AIでの曲づくりの正体は「設計図づくり」です。Sunoに入れるのは①スタイル(英語の指示文)と②歌詞の2つだけ。これを相棒と一緒に作ります。
- いちばん大事なのは、人間が「逆説」を決めること。舌切り雀を片思いの話に読み替えるような、話の芯はAIに丸投げしません。決めるのは人間、書くのは相棒です。
- 1曲は、タイトル・スタイル欄・歌詞・ジャケット画像の4点セットで組み立てます。7月17日から配信が始まる「鶴の恩返し」の曲を例に、その中身を見せました。
- コツは4つ。①難読漢字にかっこでふりがな②構造を英語タグで区切る③スタイル欄は英語で具体的に④一発で決めず、何回か作っていいものを選ぶ。
- 正直、生成には運があります。それでも設計図がしっかりしていると、良い曲に当たる確率は上がる、というのが今の実感です。
このシリーズの曲は、7月17日から毎週金曜、7週続けて配信していく予定です。
宣伝するのは気恥ずかしいのですが、「AIが作った昔話の歌って、どんな感じ?」と気になる方がいたら、そのうち耳にする機会があると思います。
そして肝心の、「稼げたのか」という数字です。
前回も書いたとおり、音楽サービスの売上は2〜3ヶ月遅れて届きます。だから今はまだ、数字はほとんど見えていません。
届いたら、良くても悪くても、この連載でそのまま定点観測として報告します。ここが、この連載のいちばん大事な約束です。
なぜ私がこうやって収益化に挑戦しているのか、その最初の作戦は収益化への挑戦、正直な作戦を立てましたに書いています。あわせて読むと、この音楽連載がどこに位置づくのか、見えてくると思います。
※追記(2026年7月17日): この記事で作り方を見せた昔話シリーズの第1弾シングルに、配信ページができました。7週連続配信の1曲目です。あわせて、AIと作ったBGM素材を買い切りで販売しているショップも並べておきます。どちらもAIと作った曲だと明記したうえで公開しています。
👉 Snow at Dawn 〜与平の裏切り〜 の配信ページを見る
好きな昔話を一つ選んで、脇役の目から見たらどんな話になるか、思い浮かべてみてください。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。また次の記録で。
次に読む
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