AIで作った曲を、BOOTHで直販してみた——手数料5.6%の直販ルートを開くまで(音楽連載・番外編)
SpotifyやApple Musicへの『配信』とは別に、音源ファイルそのものを買い切りで売る『直販』のルートを開きました。番外編は、その記録です。調べた範囲では、定番の音楽素材サイトや海外の直販サイトはAI生成曲を受け付けていませんでした。その中で残っていたのが、日本のBOOTHです。規約を相棒(AI)と一次確認し、Sunoの『著作権は保証されない』という前提に合わせて『譲渡ではなく利用の許諾』という売り方を設計し、相場を調べて1パック800円に決める。手数料は5.6%+45円なので、800円で手取りは710円。そうしてBGM10曲パックを3つ並べたショップができました。正直な話も添えます。ほぼ全部を相棒が自動でやってくれたのに、最後のファイルのアップロードだけは、AIにできませんでした。
先に結論:SpotifyやApple Musicで聴いてもらう「配信」とは別に、音源ファイルそのものを買い切りで直接売る「直販」のルートを開きました。今日はその記録です。調べた範囲では、定番の音楽素材サイトや海外の有名な直販サイトは、AIで作った曲を受け付けていませんでした。その中で残っていたのが、日本の「BOOTH」というマーケットです。ここはAI作品を全面禁止しておらず、実際にAI製のBGMを売るショップがたくさんありました。ただし出すには準備が要ります。相棒(AI)と規約を確認し、「AIの曲は著作権が保証されない」という前提に合わせて、「著作権を譲る」のではなく「使うことを許す(利用の許諾)」という売り方を設計する。そして相場を調べて、10曲パックを1つ800円に。こうしてBGM10曲パックを3つ並べたショップが、数日前にできあがりました。正直に言うと、ほとんどを相棒が自動でやってくれたのに、最後のファイルを画面に置く作業だけは、AIにはできませんでした。
こんにちは、アイランドネームです。
この音楽連載では、AIで曲を作って、それを世に出すまでの記録を、正直に書いてきました。連載第2回で、SpotifyやApple Musicといった音楽サービスに曲を届ける「配信」の話を書きました(作った曲をSpotifyやApple Musicに届ける方法——DistroKidで23サービスに一括配信した話)。今日はその番外編です。配信とはまったく別の、もう一本のルートを開いた話をします。
私の相棒であるAI(Claude Code。いまはFable 5というモデルと組んでいます)と一緒に進めた記録です。以降はこのAIのことを、いつものように「相棒」と呼びます。
「配信」と「直販」は、そもそも別のものだった
今日の話の前提を整理させてください。曲でお金を得る道には、大きく2つあります。
- 配信:SpotifyやApple Musicで聴いてもらい、再生された回数に応じて少しずつお金が入る仕組み。連載第2回で書いた、DistroKidを使うルートがこれです。
- 直販:音源のファイルそのものを買い切りで直接売る仕組み。買った人は、そのファイルを自分の動画やゲームのBGMとして使えます。
同じ「曲を売る」でも、性質はまるで違います。じわじわ積み上がる細く長い配信と、1本売れたらまとまって入る太く短い直販。私は両方やってみることにしました。
ただし、ひとつルールを決めました。直販で売る音源を、そのまま別の配信サービスにも重ねて出すのはやめる、というルールです。同じ音を二重で流すと権利の管理が混乱しますし、買ってくれた人にも不誠実だと感じたからです。
きっかけ:AIの曲を受け付けてくれる場所が、思ったより少なかった
直販をやろうと決めて、最初にぶつかったのが「そもそも、どこで売れるのか」という壁でした。
音源の直販というと、有名な音楽素材のサイト(Audiostockなど)や、海外の直販サイト(Bandcampなど)がいくつか思い浮かびます。相棒と一緒に、そういった定番の場所を順番に調べていきました。ただ、ここは当時調べた範囲での話として書きます。私が調べたかぎりでは、それらの定番サイトの多くは、AIで作った曲を受け付けていませんでした。これは各サービスの方針なので、良い悪いを言うつもりはありません。ただ、AIで作った私の曲にとっては、扉が閉まっている場所が多かった、というのが実感でした。
そんな中で残っていたのが、日本の「BOOTH」でした。pixivという創作サイトが運営するマーケットで、絵やグッズ、音楽などを個人が売れる場所です。調べてみると、AI生成の作品を全面的に禁止しているわけではなく、実際にAI製のBGMを売るショップがたくさん営業していました。AIの曲にとっては、数少ない「開いている扉」だったのです。
規約を、相棒と一緒に一次確認した
ただ、「禁止されていない」と「何をやってもいい」は違います。ここは慎重に進めたかったので、相棒にBOOTH公式のお知らせを読み込んでもらいました。参考にしたのは、AI作品への対応について書かれた公式アナウンス2本です(2023年5月のものと、2025年7月のもの)。
読んでわかったのは、BOOTHが問題視しているのは、次の2つだということでした。
- 特定の作家や作品、声に「似せた模倣」を出すこと。
- 差別化のない作品を、大量・連続して出品すること。
私が作っているのは、誰かに似せたものではない、完全にオリジナルの器楽BGMです。だから1つめの「模倣」には当たりません。気をつけるべきは、2つめの「差別化のない大量出品」のほうでした。
ここで一つ、対策の工夫をしました。オリジナルの曲でも、1曲ずつバラバラに20点も並べると、機械的に「量産している」と見なされてしまうリスクがあります。そこで、「作業用」「和風」といった用途でまとめた「10曲パック」という、編集された1つの商品にしました。こうすれば、量産ではなく「差別化された商品」になります。
この記事のいちばんの山場:ライセンスの設計
ここが、今回いちばん頭を使ったところです。少し込み入りますが、なるべく平たく書きます。
AIの曲を売るとき、避けて通れない前提があります。作曲サービスのSunoは、その規約の中で「AIが作った生成物に、著作権が発生する保証はない」という趣旨のことを、はっきり書いています。ということは、私は「この曲の著作権をあなたに譲ります」という売り方はできません。自分でも持っているか確実でないものを、譲れるとは言えないからです。
そこで相棒と考えた末に、こういう設計にしました。「著作権の譲渡」ではなく「利用の許諾」として売る、という形です。かみ砕くと、「この音源を使う権利をお渡しします。ただし、権利そのものを丸ごと譲るわけではありません」という売り方です。しかも、あなただけが使える独占ではなく、複数の人にお渡しする「非独占」のライセンスにしました。
そのうえで、買った人が迷わないよう、利用のルールをやさしい日本語で書き起こしました。中身はこうです。
- 商用利用OK。動画やゲーム、配信、店内BGMなどに、収益化されたものも含めて自由に使えます。
- クレジット(作者名)の表記は任意。書かなくても構いません。
- 禁止するのは2つだけ。音源ファイルそのものを再配布・転売すること。そして、音源を「素材」としてそのまま売り直すこと。作品の一部として使うのはすべてOKで、横流しだけを止める、という考え方です。
この利用ルールは、商品説明の中と、ダウンロードするZIPファイルの中の、両方に入れました。買う前にも、買った後にも、いつでも確認できるようにしたかったからです。
そしてもう一つ。商品説明には「これはAIで生成した音源です」と、自分から正直に書き添えました。隠して売ることもできたかもしれませんが、この連載自体が「正直に記録する」がテーマです。ここでごまかしたら、本末転倒だと思いました。
価格:相場を調べて、800円に決めた
売り方が決まったら、次は値段です。ここは感覚で決めず、相棒にBOOTHの相場を調べてもらいました。
10曲前後で商用利用OKのBGMパックは、だいたい300円から1,000円のあいだに集まっていました。安すぎると自分の首を絞めますし、無名のスタートで高すぎても手が伸びません。そこで、その帯の中ほどにあたる800円に決めました。
手数料の計算も、正直に書いておきます。BOOTHの手数料は「販売価格の5.6%+45円」です。800円のパックが1つ売れると、手数料は90円。手元に残るのは710円という計算になります。出品やショップの開設そのものは無料なので、初期費用はかかりません。売れて初めて、手数料が引かれる仕組みです。
できあがったのは、3つのパックが並ぶショップ
こうして、数日前に3つの商品が並ぶショップができあがりました。名義は、この連載でおなじみの「KnoSHIMA 1029」です。
- カフェ・作業用のLo-fi BGM 10曲パック(800円)
- 和風・旅情のBGM 10曲パック(800円)
- ゲーム・ファンタジーのBGM 10曲パック(800円)。RPGの定番の場面で使えるような曲を集めました。
KnoSHIMA 1029という名義は公開しているものなので、ショップのURLも載せておきます。
👉 KnoSHIMA 1029 のBOOTHショップをのぞいてみる
正直な話:build in publicなので、格好悪いところも書きます
ここからは、うまくいった話だけではない、正直な舞台裏です。
まず、ゲームのBGMパックには、2分に満たない短い曲が4つ入っていました。ゲームのBGMは、同じ曲を繰り返して流す「ループ再生」を前提に作ることが多く、1曲が短くても不自然ではありません。ただ、それを黙って売ると「思ったより短かった」とがっかりされます。そこで、その4曲は「ループ再生を前提にした設計です」と断ったうえで、実際の長さを1曲ずつ商品説明に書きました。長さを隠して売らない。地味ですが、ここは譲れないところでした。
次に、いちばん意外だった話です。今回、規約の確認も、商品ページの文章も、説明文も、タグ付けも、最後の検品も、ほとんどすべてを相棒が自動でやってくれました。ところが、最後の最後、たった一つだけ、相棒にできない作業がありました。
それが、音源ファイルのアップロードです。
BOOTHのファイル登録画面は、本物のマウスでファイルをつまんで枠の中にポトンと落とす「ドラッグ&ドロップ」専用になっていました。この、人間なら誰でもできる動作が、AIにはできなかったのです。結局ここだけは私が手を動かしました。ファイルを3回ドラッグして置くだけ、1商品あたり2分ほど。あれだけ賢い相棒が、いちばん最後に苦手だったのが、まさかのドラッグ&ドロップ。思わず笑ってしまった小話です。
もう一つ、この連載の方針にかかわる工夫も書いておきます。BOOTHには、個人の出品者向けに、連絡先を表に出さずに済ませられる設定がありました。このブログは「本名を出さない」を方針にしているので、その設定を使いました。名義のKnoSHIMA 1029とあわせて、直販を始めても本名は表に出ずに済んでいます。
で、売れたのか——という数字
いちばん気になるところだと思うので、正直に書きます。
売上は、まだゼロ件です。
なにしろ、ショップを公開したのは数日前。まだ誰の目にも、ほとんど触れていません。BOOTHは、出せば勝手に売れる場所ではなく、自分で人を呼んでこないといけない場所です。ここからブログやSNSで少しずつ入り口を作っていく必要があります。
この連載の約束は、良くても悪くても、数字をそのまま定点観測して報告することです。だから、直販が動き出したかどうかは、しばらくしてから、正直な数字とともにまた書きます。「売れました」と勢いよく報告できたら格好いいのですが、今はまだ、その段階ではありません。
まとめ
長くなったので、今日の話をまとめます。
- 曲でお金を得る道には「配信」と「直販」があります。配信は再生ごとに少しずつ、直販は買い切りでまとまって。今回は、その直販のルートを開いた記録です。
- 調べた範囲では、定番の音楽素材サイトや海外の直販サイトは、AIの曲を受け付けていませんでした。その中で開いていた扉が、日本のBOOTHでした。
- 出すにあたり、相棒と規約を一次確認しました。BOOTHが問題視するのは「模倣」と「差別化のない大量出品」。だから1曲ずつではなく「10曲パック」という編集された商品にしました。
- いちばんの山場はライセンス設計です。Sunoは「AIの曲に著作権が発生する保証はない」としているので、「譲渡」ではなく「利用の許諾(非独占)」として売る形にしました。商用OK・クレジット任意・横流しだけ禁止。この規約を商品説明とZIPの両方に同梱し、AI生成であることも自分から明記しました。
- 価格は相場を見て800円。手数料は5.6%+45円なので、800円が売れると手取りは710円です。
- 正直な話。短い曲は長さを1曲ずつ明記し、本名が出ない設定を使いました。そして、ほとんどを相棒が自動でやってくれたのに、最後のファイルのドラッグ&ドロップだけはAIにできず、私が手を動かしました。売上はまだゼロ件。数字は、これから定点観測で報告します。
この音楽連載は、Sunoに課金した第1回(AIで音楽を作って稼げるのか、Sunoに登録して課金した話)、配信を扱った第2回、作り方を公開した第3回(AIと一緒に曲を作る方法)と続いてきました。今日の直販は、その「出口」をもう一本増やす番外編です。作った曲を、どうやってお金に換えていくのか。その正直な過程を、これからも記録していきます。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。また次の記録で。
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