ゆっくり動かしたら、逆にカクカクした——87%のコマが前と同じ絵だった話
作業用BGMの背景を、ごくゆっくり動かす映像に作り替えました。ところが見返すと、なめらかどころかカクついています。感覚で直す前に測ってみたら、87%のコマが前のコマと1ピクセルも違っていませんでした。品質を上げる設定を3段階まで上げても23%までしか下がらず、計算したら完全に消すには6倍以上が必要だと分かりました。最後は設定ではなく道具を変えて、静止したコマをゼロにできた記録です。
先に結論:AIの相棒(Claude Code)と作った作業用BGMの映像が、ゆっくり動かしたはずなのにカクついていました。 感覚で直す前に測ったところ、87%のコマが前のコマと1ピクセルも違っていませんでした。止まっては飛ぶ、を繰り返していたわけです。 品質の設定を3段階上げても、静止したコマは23%までしか減りませんでした。計算すると、完全に消すには今の6倍以上の設定が必要でした。 最後は設定ではなく道具そのものを変えて、静止したコマをゼロにできました。しかも作業時間は3分の1になりました。
こんにちは、アイランドネームです。
いま、AIと作った作業用BGMを毎日1本ずつ公開しています。1本が2時間の長さで、画面には風景が映っているだけの動画です。
最初は完全な静止画でした。2時間、まったく動かない1枚の絵です。
それを「ごくゆっくり動かしたい」と思って作り替えました。写真の中をゆっくり横に流れていったり、少しずつ寄っていったりする、あの動きです。
作り直して見返してみたら、思っていたのと違いました。
なめらかに流れるどころか、カクついています。止まっている、と思ったら急に少し動く。また止まる。
「なんとなくカクカクする」を、数字にしてみた
こういうとき、私はつい感覚で注文をつけてしまいます。「もっとなめらかにして」と。
でも今回は、先に測ってもらうことにしました。前の記録でも書いたのですが、推測で対策を打つと、手間をかけた分が丸ごとムダになることがあるからです。
相棒に頼んだのは、こういうことでした。
動画の隣り合ったコマ同士を比べて、どれくらい絵が変わっているか数えてください。
出てきた数字が、これです。
- 前のコマと1ピクセルも違わないコマ:87%
- 絵が動くのは、0.27秒に1回だけ
つまり、ほとんどの時間は完全に静止していて、たまにカクッと飛んでいたわけです。なめらかに動いていたのではなく、紙芝居をゆっくりめくっていたようなものでした。
「なんとなくカクカクする」という感覚は、正しかったのです。
原因は、道具の作りそのものだった
なぜこうなるのか。相棒の説明は、こういうものでした。
映像を切り出すとき、位置は1ピクセル単位でしか指定できません。0.5ピクセルずらす、ということができない仕組みなのだそうです。
そして今回は「ごくゆっくり」動かしたかった。2分かけて、画面の幅の6%ぶんだけ動く速さです。
このふたつが噛み合いませんでした。
ゆっくりすぎて、1ピクセル動くまでに時間がかかりすぎるのです。その間、絵はまったく同じまま。時間が来ると、カクッと1ピクセル飛ぶ。
速く動かせば起きない問題でした。でも、速く動かしたら作業用BGMになりません。
品質を上げてみたが、頭打ちになった
最初の対策は、素直なものでした。内部で使う作業用の解像度を上げる、というものです。
歩幅を細かくすれば、1歩が小さくなって目立たなくなるはずだ、という理屈です。
3段階に上げて、そのたびに測ってもらいました。
| 内部の作業解像度 | 静止していたコマ | 動きのムラ |
|---|---|---|
| 1.5倍(最初) | 89% | 3.94 |
| 4倍 | 51% | 1.97 |
| 6倍 | 23% | 1.33 |
いちばん右の「動きのムラ」は、コマごとの動く量がどれだけ揃っているかを表した数字です。小さいほど、一定の速さでなめらかに動いていることになります。
確かに良くなっています。89%だった静止コマが23%まで減りました。
ただ、ここで気になることがありました。改善の幅がどんどん小さくなっているのです。
そこで、こう聞いてみました。
完全にゼロにするには、どこまで上げる必要がありますか。
計算してもらったら、諦めがついた
返ってきた答えは、はっきりしていました。
すべてのコマで絵が動くようにするには、内部の作業解像度を、いま画面に出しているサイズの33倍にする必要がある、というものでした。
いま出しているのが横1,920ピクセルですから、63,000ピクセルを超えます。1枚の写真としては、ちょっと想像がつかない大きさです。
そして6倍の時点で、すでに処理時間が3倍近くに膨らんでいました。これ以上は現実的ではありません。
ここで、方向を変えることになりました。
私はこの計算がなければ、たぶん「もう1段階だけ上げてみて」と言い続けていたと思います。頑張れば届きそうな気がしてしまうからです。
届かない、と数字で分かったのがよかった。
道具を変えたら、0%になった
相棒からの提案は、こういうものでした。
いま使っている道具は1ピクセル単位でしか位置を指定できないけれど、別のやり方なら小数点以下の位置で切り出せる。そちらに変えてはどうか、と。
同じ「絵を切り出して並べる」作業でも、道具によってできることが違うのだそうです。
結果がこれです。
| 方式 | 静止していたコマ | 動きのムラ | 2分ぶんを作る時間 |
|---|---|---|---|
| 解像度6倍まで上げたもの | 23% | 1.33 | 132秒 |
| 道具を変えたもの | 0% | 0.19 | 51秒 |
静止していたコマがゼロになりました。すべてのコマで、絵が少しずつ動いています。
動きのムラも3.94から0.19まで下がりました。一定の速さで流れている、ということです。
そして、作る時間が3分の1になりました。解像度を上げ続けていたときより、速いのです。
正直に言うと、私はここで少し悔しくなりました。解像度を上げる作業に、それなりの時間を使っていたからです。
でも、あの3段階の測定がなければ「頭打ちである」ことに気づけませんでした。ムダではあったけれど、必要なムダだったのだと思うことにしています。
良くなった代わりに、増えたもの
いいことばかりではありませんでした。
動画のファイルの大きさが、1本あたり1.1ギガバイトから1.7ギガバイトへ、5割ほど増えました。
理由は単純で、すべてのコマの絵が違うようになったからです。同じ絵が続くと、動画は小さく圧縮できます。全部違えば、そのぶん情報が増えます。
つまり「静止したコマが多い」ことは、圧縮の面では都合がよかったわけです。カクついていたからこそ小さかった、とも言えます。
画質や見え方に問題はありませんが、公開のために送る時間は長くなりました。ここは受け入れることにしました。
今回の役割分担
いつも通り、どちらが何をしたかを残しておきます。
| やったこと | |
|---|---|
| 👤 私 | 「カクカクしている」と伝えた。解像度を上げる案を選んだ。まだ足りないと伝えた。増えた容量を受け入れる判断をした |
| 🤖 相棒 | カクつきを数字にした。原因を説明した。3段階で測り直した。完全解消に必要な数値を計算した。別の道具を提案して作り直した |
私がやったのは、正直なところ「まだ気になる」と言い続けたことくらいです。
ただ、ひとつだけ役に立ったことがあるとすれば、感覚のまま「なんとなく直して」と言わずに、測ってもらってから判断したことだと思います。
まとめ:上げ続ける前に、天井を計算する
今回の学びは、ひとつだけでした。
同じ道具の中で数字を上げ続ける前に、その道具の天井がどこにあるかを計算してもらう。
今回で言えば「33倍必要」という一行です。これが出た瞬間に、解像度を上げる道は消えました。そして、別の道具を探すという判断ができました。
もしこの計算をしていなければ、私は「あと1段階」を何度か繰り返して、時間だけを使っていたはずです。しかも最後まで直らないまま。
AIに何かを頼むとき、「もっと良くして」と言うのは簡単です。でもそのとき、「このやり方だと、どこまで良くなりますか」と一緒に聞いてみる。
限界が分かれば、粘るべきか、やり方を変えるべきかを決められます。今回の私には、それが遠回りを止めるブレーキになりました。
なお、この動画がちゃんと見てもらえるかどうかは、まだ分かりません。なめらかになったことと、再生されることは別の話です。数字が出たら、また正直に書きます。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。また次の記録で。
次に読む
- 制作の記録
自分の曲に、間違った名前をつけていました——「クラシック」と名乗った時点で負けていた話
作業用BGMのチャンネルが伸びないので、同じジャンルの日本語動画を82本まとめて調べました。「作業用BGM クラシック」で上位に出る10本のうち、本当のクラシックは2本だけ。しかもその2本は誰もが知っている名曲でした。わたしはオリジナル曲に「クラシック」という名前をつけていました。期待されているものと、渡しているものが違っていたわけです。タイトルも説明文も全部つけ直しました。
- 制作の記録
英語で3日、6回しか再生されませんでした——予約済みの10本を全部日本語に作り直した話
広告の単価が高いと聞いて、BGMのYouTubeチャンネルを英語で始めました。3日で6回しか再生されませんでした。同じ条件で伸びている日本語チャンネルを調べたら、3ヶ月半で登録4,390人、総再生74万回。予約公開まで済ませた10本を全部日本語に作り直し、今日ようやく差し替えが終わりました。結果はまだ出ていません。その途中経過を、都合の悪い数字ごと出します。
- 制作の記録
YouTubeのサムネイルが、依頼文ひとつで見違えた——AIへの頼み方テンプレを公開します
YouTube音楽チャンネルのサムネイルを、目的と情緒的な内容紹介だけを渡す依頼文で作り直しました。完成画像を分析すると、情緒コピー、大見出し、シーンの3連コピー、用途バッジという4層構成が見えてきました。残り6本にも展開し、作業中に重複予約の事故まで見つけた一日の記録です。